また髪のセットができるようになった

3年前から徐々に薄くなっていく頭頂部。前髪の生え際も確実に後退していく。
鏡を見るたび、ため息が出た。

「もう、伸ばすのは無理だな…」

そう諦めて、僕はバリカンを買った。3mmの坊主頭。
これなら薄毛が目立たない。いや、正確には「誤魔化せる」と思った。
床屋に行く必要もない。自宅で2週間に一度、バリカンを頭に当てる。ジリジリという音とともに、髪への未練も刈り取っているつもりだった。

そう自分に言い聞かせながら、毎日同じ坊主頭で鏡の前に立つ。
でも、街で見かける同年代の男性たちは違った。
自然に七三分けにしたり、前髪を少し立ち上げたり、ワックスでふんわりとボリュームを出したり。
羨ましかった。
「髪型を変えてみたいな…」

ある日、電車の広告でAGA治療のクリニックを見た。
「諦めていた髪が、戻ってくる」
（本当かよ…でも、もし…）
スマホで検索すると、同じような広告が次々と目に入ってくる。
「もう一度だけ、挑戦してみようか」
クリニックの予約ボタンを押す指が震えた。

初診の日、問診票に記入しながら思った。
医師は頭皮を丁寧に診察し、毛根の状態を確認した。
「典型的なAGA、男性型脱毛症ですね。特に頭頂部と前頭部の毛根が細く弱っています」
「でも、治療は十分可能です。『プロペシア』で脱毛を抑制し、『ミノキシジル』で発毛を促進します」

2ヶ月経った頃に
「ん…？」
ある朝、頭頂部を触ると、何か違和感がある。うぶ毛？いや、確かに短い毛が生えている。

4ヶ月目
「伸ばしてみようかな…」
バリカンを使う坊主をやめた。少し長めの刈り上げスタイルへ。
5mm、8mm、そして1cm。

7ヶ月目
朝、洗面所で鏡を見る。髪がある自分がいた。
トップは3cm程度。サイドは少し短めに刈り上げて、ツーブロック風に。
前髪も少し伸びて、額の生え際がかつてないほどしっかりしている。
ドライヤーで乾かし、ワックスを手に取る。指先で髪を立ち上げ、少し毛流れを作る。
「こんな感じかな…」
（朝、髪をセットするなんて、何年ぶりだろう）
鏡の中の自分が、少し誇らしげに笑っている気がした。

久しぶりに会った友人が驚いていた。
「マジか！すげえな。でも俺、あの坊主頭が恋しいな…あれも良かったよ。」
「ほんとかよ！」
笑い合いながら、心の中で思った。

今、僕は毎朝5分、髪をセットする時間を楽しんでいる。
一歩を踏み出すのは怖いかもしれない。カウンセリングの予約、その一歩が人生を変えることもある。
僕がそうだったように。

※あくまでも個人の感想であり、効果には個人差があります。

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